フラット35とは?
2024/04/25
家やマンションを買うときの35年ローンって損なの?
家やマンションを買うとき、多くの人が住宅ローンを利用します。
住宅ローンを組むときに悩まされるのが、返済期間を何年にするかです。
最長50年という住宅ローン商品も一部ありますが、長期返済としては35年というのが一般的です。
返済期間を延ばすことで、月々の返済額を軽減できるメリットがある反面、金利がかさむことで返済総額が増えること、さらには定年後にまで住宅ローン返済を続けなければならないというデメリットを背負うことに対して、35年ローンに否定的な意見もあります。
実際のところ35年ローンは『得なのか?損なのか?』についても考えていきたいと思います。
35年の住宅ローン(フラット35)とはどんなもの?
マイホームの購入に住宅ローンを検討している人であれば「フラット35」という名称を聞いたことがあるでしょう。
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して貸しだしている住宅ローン商品のことです。
このフラット35の特徴は、35年間ずっと金利が変動しない全期間固定金利で融資を受けることができる点です。
民間の住宅ローンとの違い
フラット35は住宅金融支援機構の住宅ローン商品なので、民間の住宅ローンとは別物だと思っている人が多いのですが、実際にフラット35を借りることができるのは銀行や信用金庫など、民間の金融機関になります。
そのため民間の金融機関にも、自社独自の長期固定金利型住宅ローンが存在している場合があり、同じ35年固定金利の住宅ローン商品が2つある金融機関もあります。
これら2つの商品は、ほとんど同じ金利に設定してあるケースが多く、どちらの住宅ローン商品を選ぶかは、事務手数料や保証料などの諸費用に違いがあります。
もちろん少しでも金利が低い住宅ローン商品を希望するのであれば、変動金利タイプが選べる民間の住宅ローン商品という選択になります。
審査の基準
フラット35と民間の住宅ローンでは審査の基準も違ってきます。
どちらの審査が厳しく、どちらが緩いという表現はできませんが、民間の住宅ローン審査に落ちてしまったが、フラット35の審査は通ったという話を聞くことが多くあります。
その理由の1つに考えられるのが、フラット35の審査基準に年間の返済負担率を重要視しているからだと言われています。
例えば年収が400万円未満であれば返済負担率30%以内とし、年収400万円以上であれば返済負担率を35%以内としているのです。
そのため転職したばかりで融資審査が通りづらいような人でも、返済負担率の範囲内であれば比較的審査が通りやすくなっているという特徴があります。
35年ローン否定派の意見
35年ローンをめぐっては、これまで様々な議論がなされてきましたが、『得なのか?損なのか?』という話には結論が出ていません。どういった角度からローンを捉えるのかによって、考え方が180度変わってしまうからです。
肯定派と否定派に分かれくり広げられる議論は、ローンや不動産の購入を検討するための材料として非常に参考になります。
ですので、ここからは35年ローンの肯定派と否定派の考え方を紹介しながら、長期固定金利の住宅ローンについて考えてみたいと思います。
まずは、否定派の捉え方からです。
・返済期間が長すぎてあり得ない
35年ローンは、その名の通り返済する期間が35年という長期間になります。30歳でローンを組むとすると、返済が終わるのが65歳ということになります。
会社員であれば若手から中堅世代と言われる頃から、定年後5年もの間、ずっと返済することになるのです。
35年の間には、年々ライフスタイルが変わっていきます。20代から30代に結婚をしたとしましょう。子供ができ、同じ住宅では手狭になってしまうかもしれません。
転勤が決まり遠方に住むことを余儀なくされた場合はどうなるでしょうか。家族を残し、ひとり単身赴任をする一方で、ローンの残債を返済し続けるということになりかねません。
せっかく家族で住むための住宅を購入したのに、離れ離れに暮らすことになってしまったのではローンを組んだ甲斐がありませんよね。
もし賃貸物件に住んでいるのであれば、家族そろって引っ越しをすることができるのに、ローンが残っているばかりにそれができません。
賃貸の場合は2年ごとに賃貸契約を更新していきますので、2年をひとつの単位とすることができます。もちろん、賃貸契約後2年を経過しない前に契約を解除することもできますので、その気になればいつでも住む場所を自由に決めることができます。
たとえば、夫の転勤が急に決まった場合であっても、家族そろって引っ越しをするという選択が取れます。
しかし長期ローンを組んで住宅を購入するということは、その家にずっと住み続けることになりますので、賃貸を借りているときのような自由度はありません。
先ほどのようなシーンでは、夫だけが一人単身赴任をして暮らす・・・などといった不自由を強いられる可能性があります。
さらに、健康に対する心配もあります。ローンを組んだ時点では健康であったとしてもいつ病気になるかもわかりません。一家の稼ぎ頭が大病を患ってしまった場合、どうやってローンを支払っていけばよいのでしょうか。
病気などにより収入が減った場合、ローンの支払い負担が重くなるので、家計を圧迫することは間違いありません。ローン否定派にとって、これは大きなリスクとして常に挙げられています。
否定派の意見まとめ
ここまで述べた否定派の考え方をまとめると、「35年もの長期間には何が起こるかわからないのだから、多額の借金(ローン)を返済し続けるなんて、リスク以外のなにものでもない!」ということになります。
これに関してはまさにその通りで、リスクを承知した上でどうするか・・・、という点を考えなければいけませんね。
では、次に35年ローンに肯定的な考えを持つ人の意見を見ていきましょう。ローンには、また別の側面もあることがわかると思います。
35年ローン肯定派の意見
次に35年ローンに肯定的な考えを持つ人の意見を見ていきましょう。ローンには、また別の側面もあることがわかると思います。
史上最低水準の低金利なので絶対にお得!
35年ローンの代表的な商品である「フラット35」は、2015年現在、史上最低水準の金利に設定されています。
固定金利であるフラット35であれば、融資を受ける時点での金利が完済まで適用されますので、利子をなるべく低く抑えるためには、ローンを組む時期が重要になります。ローンを組むタイミングによって、支払う利子が大きくことになるからです。
たとえば2004年当時のフラット35の金利は、およそ3%程度でした。一方、2015年現在の金利は1%半ば程度ですから、10年の間で金利が約半分になっていることがわかります。
この金利によって利子が計算されますので、今はとてもお得にローンを借りられる状況にあります。
1%半ばの金利は史上最低水準ですから、「今が借り時」なのです。今ローンを組んでしまえば、返済をするまでの35年もの間、現在の最低水準の金利が適用となります。
金利変動型のローンでは、将来的に金利が上がっていくことが予想されますが、フラット35の場合は今の金利で支払いを行えばよいので、今借りれば最低水準の金利でお金を借りることができます。これは非常に魅力的ですよね。
金利にはいくつかの種類がありますが、返済をしている途中であっても金利が変化する「変動金利」では、ローンを組む時点では最終的な返済額を見積もることができません。
その点、返済期間中の金利が変わらない固定金利であれば、利子を含めた返済額を事前に確定させることができるので、安心感もあります。
最終的な返済額を知ることがるというのも、フラット35の特筆すべきメリットです。
返済期間中に万一のことがあっても安心!
35年ローンを否定する考え方には、将来的な健康面の不安を懸念するものがありました。それを払拭できるものとして、肯定派が挙げているのが「団体信用保険」です。
団体信用保険とは、ローンを組んだ本人に万一のことがあった場合、生命保険会社が本人に代わって支払ってくれる制度のことです。返済が終わらない間に本人が死亡してしまったり、障害を負うなど、不測の事態に備えた保険なのです。
フラット35の場合には任意加入となりますが、民間の金融機関で融資を受ける場合には、この団体信用保険への加入をしなければならないことがほとんどです。
もちろん、団体信用保険に加入するためには保険料を支払う必要がありますし、他の生命保険と同様に健康状態などの審査があります。
35年もの長期間、お金を返済していくことになりますので、今現在は健康であったとしても将来のことは誰にもわかりません。ローン否定派の考え方は、この将来を見通せないことをローンのデメリットに挙げますが、肯定派は団体信用保険によってそのリスクが払拭できると主張します。
例えば、一家の大黒柱である夫がローンの返済を担っていた場合、夫に万一のことがあったとしても、団体信用保険があれば家はそのまま妻や子供に残ります。
生命保険の代用として活用することもできますので、新規で35年ローンを組む際に団体信用保険に加入すれば、すでに加入している生命保険を見直すことも可能です。
このような保険があるなら、将来へのリスクはかなり軽減できますので、35年ローン肯定派にとっては心強い味方と言えるでしょう。
ローンを活用することで手元に資金が残せる!
3,000万円の不動産を現金で一括購入したとしましょう。すると、当たり前ですが3,000万円のお金が手元からなくなります。
もちろん、その代わりに不動産を手に入れることができるわけですが、不動産は現金のような使い方ができません。不動産を持っていたとしても、食品や生活必需品は購入できないからです。
もし3,000万円ちょうどしか貯金がない人が、3,000万円の不動産を現金一括購入すると、手元に資金がなくなってしまいます。
ちゃんと毎日働いていて、一定の収入を得ているのであれば、日々の生活に困ることはないかもしれません。しかし、想定外のトラブルによってまとまったお金が必要になった場合には、大変なことになってしまいますよね。
たとえば、入院をしなければならなくなり、一定期間働くことが難しくなれば、日々の生活費にも困ることにもなります。保険に入っていなければ医療費を支払うことさえ困難になってしまうかもしれません。
災害に見舞われた場合にも、手元に資金がなければ修繕をすることさえままなりません。
現金がなくてはモノを購入することができませんし、さまざまなサービスを受けることもできません。現金さえ持っていれば、ある程度、どのようなことに対しても、対処することができるというわけです。
その点、ローンを活用して住宅を購入すれば、自分の手元にある現金は残しておくことができます。
つまり、ローンを組むことで、自分の手元にあるお金をキープしつつ、他人(金融機関)のお金を借りて高額な不動産物件を購入することができるので、明らかにお得(有利)だろうというのが、肯定派の考え方です。
35年で組んでも、もっと早く返済することができる
35年を返済期間に設定しても、必ずしも35年という期間にとらわれる必要はありません。
物件を購入してしまうと、ライフスタイルの変化に対応できないという否定派の考え方を紹介しましたが、ローン返済中の売却益でローンを完済することも可能です。
将来的に物件価値が上がることがあれば、売却により利益が出ることもあり得ます。
たとえば、大規模な花火大会が一望できる高層マンションなどは、誰もが欲しい物件です。住居として使用していたとしても、将来的な値上がりが期待できます。そして価値が上がった時点で売却してしまえば、投資としての効果を得られます。
また、売却をしないまでも、賃貸物件として第三者に貸すことだってできます。
つまりローンを組んで購入したものの、何らかの理由で利用しないことになったとしても、物件を現金化することは可能なのです。
だからこそ、「低金利の今、ローンを組んで住宅という資産を手に入れよう」というのが肯定派の大きな意見の一つです。
物件の将来性を見極めることが重要になるので、簡単なこととは言えませんが、物件を見る目がある人にとっては、35年ローンを活用した資産形成というのは大きな魅力なります。
肯定派の意見まとめ!
肯定派の意見をまとめると、「歴史的な低金利の今だからこそ、ローンを活用しないともったいない!リスクは保険などである程度カバーできる」ということになります。
この考え方により強く同意できる人は、積極的にローンの活用を考えて行ってもいいと思います。
結局、35年ローンで得をするのはどういった人なのか?
というわけで、35年ローンの是非について、肯定派と否定派の主な考え方を紹介してきました。あなたはどのような印象を持ったでしょうか?
ローンという借金を負債と捉える否定派と、不動産という資産をローンで手に入れるという肯定派の違いがご理解いただけたと思います。
ただ、恐らく多くの人が一番知りたいことは、「自分がローンを利用すると得なのか?損なのか?」ということですよね。
そこでここからは、どのような人がローンで得をするのかについて触れてみたいと思います。
35年ローンで得をする人は?
まず、「安定した収入を得られている人」は、35年ローンで得をすると言えます。
現在だけでなく、将来的な安定収入を約束されている仕事と言えば、公務員が代表格でしょうか。リストラされる恐れのない公務員であれば、金融機関からの評価も高くなり、融資を受けやすくなります。
収入が安定している人であれば、繰り上げ返済も可能になりますので、一気に元本を減らすことができます。元本が減れば利息も減り、最終的な返済額が減ります。
安定した収入があれば、自分に有利な返済計画を立てることができ、結果として低金利ローンの活用の仕方が広がっていきます。つまり、低金利の恩恵を最大限に受けることができるので、得になると言えるのです。
また、「高所得者」もローンで得をする可能性が高くなります。
手元のお金を投資すればリターンを期待することができます。そのため、高所得者は手元の資金を高額商品の購入に充てたがりません。
手元にある現金を担保にすることで、それ以上のお金を金融機関から借りることができます。そうすれば、金融機関から借りたお金で住宅を購入し、手元にある資金は別の投資に回すことができます。
ローンを借りることによって、物件を購入するだけでなく、お金でお金を増やすサイクルをつくれるわけです。
もちろん、投資効果への期待だけではなく、節税目的でローンを利用する場合もあるでしょう。
少し上級者向けの話となりますが、以上の点から、高所得者もローンを活用することで得をする可能性が高いと言えるでしょう。
35年ローンで損をする人は?
それでは逆に、35年ローンで損をする人はどのような人なのでしょうか。それは、「無理な返済計画を立ててしまった人」です。
ローンの返済計画は、ボーナスを考慮せずに立てるべきだと言われています。ですが実際のところは、高額のボーナスをあてにしてローンを組んでしまう人がいます。
ボーナスを含む総支給額で年収500万円の人が、500万円をベースにしてローンを組んではいけません。
ボーナスはあくまで企業業績に連動することが多く、支給のたびに額が変わってしまいます。そのため、ボーナスを入れない月額給与を基準にする必要があるのです。
毎月の給与額はそれほど下がることはなくても、ボーナスは「ゼロか100か」という極端な状態があり得ます。
ボーナスを含んだ年収ベースでローンを組んだばっかりに、せっかく購入した物件を手放すことになってしまった・・・という人は少なからずいるはずです。
「年収額が常に一定ではない」ことを前提にすれば、ローンで損をするリスクを減らすことができます。ローンを組む際は、ボーナス額を考慮せずに、余裕を持った返済計画を立てることが鉄則です。
まとめ ―ローンを利用することの最大のメリットとは?―
それでは最後に、35年ローンに対する管理人の個人的な意見を書きたいと思います。
35年ローンに対して、管理人がもっとも強く思うことは、「ローンを使うことで得られるメリットにもっと目を向けよう!」ということです。
高額商品である不動産を購入するためには、ローンを使うか現金で購入するかの二者択一しかありませんが、数千万円の費用を現金一括購入できる人はほんの一握りです。
ローンの是非はともかく、現金一括購入ができないのであれば、そもそも選択肢はローンを組んで購入する以外にないのです。
ということはつまり、ほとんどの人にとって、「ローンという仕組みがなければ不動産を購入できない」ことになります。どうしても手に入れたい物件があるのであれば、自分の経済力に見合ったローンを組んで購入するしかないのです。
ローンの最大のメリットは、「手元にある資金以上の買い物ができる」という点に他なりません。また、これほどの低金利(手数料)で多額のお金を借りられる仕組みも、他にはないでしょう。
したがって、「マイホームに住みたい!」という願いを叶えるための方法としては、ローンの活用以上に有効な手段はないのです。
ローンを利用しないで住宅を購入する場合を考えてみれば、ローンを使うことの意義を実感できるはずです。
もし今から購入資金を現金で貯めようとしたら、マイホームを手に入れることができるのは35年後になります。35年後には、不動産価格が今よりも高騰しているかもしれませんし、貨幣価値が変わっていて、予想よりも多額の資金が必要になっているかもしません。
そしてなにより、あなたのライフスタイルが劇的に変わっています。35年後には子供は巣立って独立し、あなた自身も老いています。
マイホームが本当に必要だと思える「今」と違って、35年後のあなたにとっては、もしかしたらマイホームはさほど必要なものではなくなっているかもしれないのです。
それに対して、住宅ローンを活用すれば、念願のマイホームを「今」手に入れることができます。当然のことながら、ローンを返済する間であったとしても、マイホームはあなたの自由に利用することができます。
コツコツと貯金をして35年後に手に入れるマイホームと、ローンを組んで「今」手に入れるマイホームとでは、決して価値は同じではないはずです。
夫婦水入らずで暮らすための一戸建て、子供も交えてにぎやかに暮らすためのマンション、両親への親孝行もできる二世帯住宅・・・。
ローンを組めば、これらが今すぐに実現します。これこそが、住宅ローンが持つ最大のメリットではないでしょうか?
「ローンを使うことが金銭的に得か?損か?」というのももちろん大事な話ですが、それ以上に大事なことがあると、管理人は考えます。
ローンを使って手に入れたマイホームで、大切な家族と自由な暮らしを謳歌できることを想像してみてください。そのイメージにワクワクするのであれば、ローンを活用する意味はあると思います。
今すぐにでも欲しい物件があるかどうか?それを手に入れることで、お金以上の価値が得られるかどうか?
この点を、家族を交えてよく話し合ってみて下さい。
ローン自体は、あくまでも物件を手に入れるための手段に過ぎません。本当に大事なことは、ローンを使って手に入れたマイホームで、幸せな生活が送れるかどうかです。
この点を理解した上で、改めてローンを使うかどうかを考えてみれば、あなたにとって本当に35年ローンが必要かどうかが見えてくると思います。
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